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「落窪物語」巻四(その2)

喜びに起き立ちて願立てさす。「定業ぢやうごふの命も延べ給へ」と、心にも願立てさするけにや、少しおこたりて、思ひつよりて起き居て、内裏へ参るべき日見せ、とかくせさすべきこと当て行ふとても、「我が子ども七人あれど、かく現世、後生うれしき目見せつるやありつる。かかりける仏を、少しにてもおろかなりけむは、我が身の不幸なる目を見むとてこそありけれ。子二三人、婿取りたれど、今に我にかかりてこそはありつめれ。あまつさへ憂き恥の限りこそ見せつれ。この殿は、塵ばかり仕うまつることのなけれど、御顧みをかくこよなく見る、かへりては、恥づかしき心地して。我死なば、代りには、をのこ子にまれ、をんなに生まれ、君に仕うまつれ」と、いとさかしう言ひいます。かかれば、北の方、「憎し、く死ねかし」と思ふ。




大納言はよろこびのあまり床から起き上がって願を立てました。「定業([前世から定まっている善悪の業果])の命をどうか延ばしてくださいませ」と、心から願立てしたので、少し病いも回復しました、思いの強さで起き上がり、内裏へ参る日を占わせました。出仕するための準備をそれぞれに割り当て、「我が子は七人おるが、現世、後世にもわしにこのようなうれしい目を見せてくれる者が他にいるだろうか。仏のような落窪の君を、少しなりとも疎かにしたから、今まで不幸な目に遭ってきたのじゃろう。子の二三人には、婿取りをしたが、今もわしを頼っているようじゃ。わしに恥をかかせた者もおった。左大将殿には塵ほども親切にしたことはなかったが、これほどまでにわしのことを思い遣ってくれた、振り返ってみれば、恥ずかしい限りじゃ。わしが死んだ後は、代わりに、男であれ、女であれ、左大将殿に仕えよ」と、はっきりと申しました。一方、北の方は、「なんて憎らしいことを申すのでしょうか、早く死ねばいいものを」と思いました。


続く


by santalab | 2013-07-16 07:09 | 落窪物語

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