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「落窪物語」巻四(その22)

中の君の御夫の左少弁さこべん、身いと貧しとて、受領ずりやう望まむ、北の方に尽きて申しければ、美濃に、いたはりなし給ひつ。越前のかみ、今年なむ代りければ、国の事、いとよくなしたりければ、引き立てよく、やがて播磨になしつ。衛門の佐は少将になりぬ。誰も誰もこの御徳にと、集まりて、北の方に喜び聞かせ、「これやは御徳見給はぬ。今よりは、なほ口に任せて物なのたまひそ」と言へば、「げに、ことわり」と言ひてけり。「この度の司召めしつかさは、この御族の喜びなりけり」と、人、世に言ふ。




中の君の夫である左少弁は、とても貧しくて、受領([実際に任国に赴任して政務を執った国司の最上席の者])になりたいと、左大臣殿の北の方(落窪の君)に陳情したので、左大臣殿は美濃国の、受領にしました。越前守(故大納言の長男)は、今年任期を終えて京に戻っていましたが、国事を、よく治めたので、引き立て易く、すぐに播磨守にしました。衛門佐(故大納言の三男)は少将になりました。誰かれも左大臣殿の北の方の徳であると、集まって、北の方に喜びを聞かせて、「これこそ落窪の君の徳だと思われませんか。今からは、好き放題に物を申さないでください」と言うと、北の方も「本当に、当然のこと」と言いました。「この度の司召([司召の除目ぢもく]=[在京の諸官を任命する公事])は、故大納言一族の喜びとなりましたね」と、人々は、言い合いました。


続く


by santalab | 2013-08-08 07:15 | 落窪物語

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