さるほどに、法皇は三井寺の公顕僧正を御師範として、真言の秘法を伝授せさせおはします。大日経、金剛頂経、蘇悉地経、この三部の秘経を受けさせ給ひて、九月四日の日、三井寺にて御灌頂あるべき由聞こゆ。
やがて、法皇(後白河院)は三井寺(今の滋賀県大津市にある園城寺)の公顕僧正を師範として、真言の秘法を伝授されました。大日経([真言三部経の一。大日如来の説法を編したものらしい])、金剛頂経([真言三部経の一。真言密教の根本経典])、蘇悉地経([真言三部経=大日三部経の一])、この三部の秘経([真言秘密の法を説いた経典])を伝授されて、九月四日に、三井寺で灌頂([受戒するときや修行者が一定の地位に上るときに行う儀式])があるといわれました。
(続く)