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「平家物語」惟盛都落(その1)

越中ゑつちう次郎じらう兵衛びやうゑ太刀たち脇挟み、摂政せつしやう殿の御留まりあるを押しとどまゐらせんと、しきりに進みけれども、人々に制せられて、力及ばで止まりぬ。中にも小松の三位さんみ中将ちうじやう惟盛これもりきやうは、日頃より思ひまうけ給へることなれども、さしあたつては悲しかりけり。この北の方とまうすは、故中御門なかのみかどの新大納言成親なりちかきやうの娘、父にも母にも遅れ給ひて、孤児みなしごにておはせしかども、桃顔たうがん露にほころび、紅粉こうふんまなこびをなし、柳髪りうはつ風に乱るるよそほひ、また人あるべしとも見え給はず。六代御前とて、生年しやうねんとをになり給ふ若君、そのいもと八歳はつさいの姫君おはしけり。




越中次郎兵衛(平盛嗣もりつぐ)は、太刀をしっかりと抱えて、摂政殿(近衛基通もとみち、平清盛の子である完子さだこの夫で安徳天皇の摂政)がいたので敵(木曽義仲よしなか)を押しとどめようと、打って出ようとしましたが、他の者たちに制せられて、仕方なくとどまりました。その中にあって小松三位中将惟盛卿(平惟盛、清盛の嫡孫)は、日頃よりもしやと心積もりしていたこととはいえ、今となっては悲しいことでした。惟盛の北の方(妻)は、故中御門(藤原家成いへなり)の新大納言成親卿(藤原成親。家成の子)の娘(次女)、父にも母にも死に別れて、孤児でしたが、若くて美しく、紅粉([紅と白粉おしろい])は人目を引き、美しい髪が風に乱れるその姿は、並ぶ人がいるとは思えませんでした。そして六代御前(平高清たかきよ)と呼ばれる、十歳になった若君と、その妹で八歳の姫君がいました。


続く


by santalab | 2013-11-15 09:12 | 平家物語

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