仁安三年の冬の頃、西行法師、諸国修行の序に、白峯の御墓に参りて、つくづくと見参らせ、昔の御事思ひ出で奉て、かうぞ詠み侍りける。
よしや君 昔の玉の 床とても 掛からむ後は 何にかはせん
仁安三年(1168)の冬の頃、西行法師(俗名佐藤義清。元は鳥羽院に仕えた北面武士)が、諸国を修業している途中で、白峯(今の香川県坂出市にある白峯寺)にある崇徳院の墓に参って、しみじみと見て、昔の事を思い出して、このように歌を詠みました。
あなたは、昔玉の床で眠っておられました。そうではなくなって、今はこちらで眠っておいでですが、どのようなお気持ちでおられるのでしょうか。
(続く)