人気ブログランキング | 話題のタグを見る

Santa Lab's Blog


「平治物語」源氏勢汰への事(その3)

別当惟方これかたは、元来信頼のぶより卿の親しみにて、契約深かりしかども、一日舎兄左衛門かみの諌言、肝にみて思はれければ、かやうに主上を盗み出だし参らせられけり。この人は、生得せい小さくおはしければ、小別当とぞ人申しける。それに信頼卿に組みして、院・内をし籠め奉る仲媒ちゆうばいをなし、今また盗み出だし参らする中媒せられければ、時の人、中小別当とぞ言ひける。大宮左大臣伊通これみち公は、「この仲は仲媒の仲にてはあらじ。忠臣の忠にてぞあるらん。光頼みつよりの諌めによつて、たちまちに誤つて改め、賢者の余薫をもつて、忠臣の振る舞ひをなせば」とぞのたまひける。




別当惟方(藤原惟方)は、もとより信頼卿(藤原信頼)と親交があり、深く約束した仲でしたが、ある日兄である左衛門督(勧修寺光頼=藤原光頼)の忠告が、肝に染みて([肝に染みる]=[心に深く感じて忘れない])、こうして主上(二条天皇)を盗み出したのでした。この人は、生まれつき小さな人でしたので、小別当と人に呼ばれました。そして信頼卿と組んで、院(後白河院)・内(二条天皇)を押し籠める片棒を担ぎ、今また盗み出す手助けをしたので、時の人は、中小別当と呼びました。大宮左大臣伊通公(藤原伊通)は、「この中は、仲媒([なかだち])の仲ではないぞ。忠臣の忠ではないか。光頼(源光頼)の忠告によって、すぐに考えを改め、賢者の余薫([先人の残した恩恵])によって、忠臣の振る舞いをしたのだから」と言いました。


続く


by santalab | 2013-12-09 18:01 | 平治物語

<< 「平治物語」源氏勢汰への事(その4)      「平治物語」源氏勢汰への事(その2) >>

Santa Lab's Blog
by santalab
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
カテゴリ
以前の記事
フォロー中のブログ
メモ帳
最新のトラックバック
ライフログ
検索
タグ
その他のジャンル
ブログパーツ
最新の記事
外部リンク
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧