人気ブログランキング | 話題のタグを見る

Santa Lab's Blog


「平家物語」一門大路被渡(その4)

日来ひごろはいかなる人も、あの人々の目にも見え、言葉のすゑにも掛からばやとこそ思ひしに、今日けふかやうに見なすべしとは、たれか思ひ寄りしぞや」とて、上下じやうげ袖をぞ濡らされける。一年ひととせ宗盛むねもり公内大臣になつて、よろこまうしのありし時、公卿くぎやうには花山くわざんゐん中納言ちうなごん兼雅かねまさきやうを始め奉て、十二じふに扈従こしようして遣り続けらる。蔵人くらんどかみ親宗ちかむね以下いげ殿上人てんじやうびとじふ六人前駆せんぐす。中納言四人しにん三位さんみ中将ちうじやうも三人までおはしき。公卿くぎやうも殿上人も、今日けふを晴れと時めき給へり。その時この時忠ときただの卿、御前へ召されまゐらせて、やうやうにもてなされ、種々の引き出物たまはつて、出でられ給ひしは、目出度かりし儀式ぞかし。




「今まではどんな者でも、平家の者たちの目に掛かり、言葉の端にも掛かろうと思っていたが、今日このような光景を目にするとは、誰が想像したことだろうか」と、身分上下の者は皆袖を濡らしました。一昨年宗盛公(平宗盛。平清盛の三男)が内大臣になって(宗盛が内大臣になったのは、寿永元年(1182))、慶び申し([任官叙位せられた者が、宮中などに参上してお礼を申し上げる儀式])があった時、公卿では花山院中納言兼雅卿(藤原兼雅。平清盛の娘を妻とした)をはじめ、十二人が扈従([貴人に付き従うこと])して続きました。蔵人頭親宗(平親宗)以下六人が前駆([行列などの前方を騎馬で進み、先導すること])しました。三位中将も三人参列しました(清盛の嫡男重盛しげもりの嫡男維盛これもり、清盛の五男重衡しげひらと藤原頼実よりざねらしい)。公卿も殿上人も、今日を晴れの日と華やかな装いでした。その時時忠卿(平時忠)は、御前に呼ばれて、様々にもてなされ、種々の引き出物を賜って、御前を退出しました、まことにめでたい儀式でした。


続く


by santalab | 2013-12-11 07:53 | 平家物語

<< 「承久記」方々へ宣旨を下さるる...      「平治物語」待賢門の軍の事付け... >>

Santa Lab's Blog
by santalab
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
カテゴリ
以前の記事
フォロー中のブログ
メモ帳
最新のトラックバック
ライフログ
検索
タグ
その他のジャンル
ブログパーツ
最新の記事
外部リンク
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧