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「平治物語」六波羅合戦の事(その1)

悪源太は、そのまま六波羅へ寄せらるるに、一人当千の兵ども、真前に進んで戦ひけり。金子十郎家忠いへただは、保元の合戦にも、為朝ためよしの陣に駆け入り、高間の三郎兄弟を組んで討ち、八郎御曹子の矢先を逃れて名を上げけるが、今度も真つ先駆けて戦ひけり。矢種も皆射尽くし、弓も引き折り、太刀をも討ち折りければ、折れ太刀をひつ下げて、「あはれ太刀がな。今一つ合戦せん」と思ひて、駆けまはるところに、同国の住人足立右馬允遠元とほもと馳せ来れば、「これ御覧候へ、足立殿。太刀を討ち折つて候ふ。御へ候はば、御恩にかうぶり候はん」と申しければ、折節帯き副へなかりしかども、「御辺の乞ふがやさしきに」とて、前を討たせける郎等の太刀を取つて、金子にぞ与へける。家忠大きに喜んで、また駆け入つて敵数多あまた討つてけり。




悪源太(源義平よしひら義朝よしともの長男)は、そのまま六波羅へ攻めてきたので、一人当千([一人千人力])の兵たちは、敵の前に進んで戦いました。金子十郎家忠(金子家忠)は、保元の合戦でも、為朝(源為朝)の陣に駆けて行き、高間の三郎兄弟(高間三郎、四郎)を討ち、八郎御曹子(為朝)の矢から逃れて名を上げました(『保元物語』の「白河殿攻め落す事」に書かれています)が、今度も先頭を駆けて戦いました。矢も皆射尽くして、弓も折れて、太刀をも折れてしまったので、折れた太刀を下げて、「ああ太刀が折れてしまった。まだまだ戦いたいのに」と思って、駆けまわっていると、同国の住人足立右馬允遠元(足立遠元)が馳せて来たので、「これを見てくれ、足立殿よ。太刀が折れてしまった。帯き副へ([脇差し])を貸してほしい、恩に着るぞ」と言いました、遠元はあいにく脇差しを持っていませんでしたが、「お主のためなら」と言って、前で戦っていた家来の太刀を取って、金子(家忠)に与えました。家忠はとても喜んで、また駆けて行き敵を大勢討ちました。


続く


by santalab | 2013-12-11 16:20 | 平治物語

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