永暦元年正月十七日の暁、常盤三人の子どもを引き具して、大和の国宇陀の郡岸岡と言ふ所に契約の親しき者あり。これを頼み尋ねて行きけれども、世間の乱るる折節なれば、頼まれず。その国のたいとうじと言ふ所に隠れ居たりける。
永暦元年(1160)正月十七日の夜明けに、常盤御前は三人(今若、乙若、牛若)の子を連れて、大和国の宇陀郡岸岡(奈良県吉野郡吉野町)と言う所に親類で親しい者がいました。そこを頼りに訪ねて行きましたが、世が乱れた時でしたので、頼ることができませんでした。そこで大和国のたいとうじ(東大寺?。奈良県奈良市にある寺)と言う所に隠れ住みました。
(続く)