Santa Lab's Blog


「増鏡」三神山(その4)

土御門殿の宮は二十にも余り給ひぬれど、御かうぶりの沙汰もなし。城興寺じやうこうじの宮僧正真性しんしようと聞こゆる、御弟子にと語らひ申しければ、さやうにもと思して、女院にもほのめかしまうさせ給ひけるを、いとあるまじき事とのみ諌め聞こえさせ給ふ。その冬の頃、宮いたう忍びて、石清水いはしみづの社にまうでさせ給ひ、御念誦のどかにし給ひて、少しまどろませ給へるに、神殿の中に、「椿葉ちんえふの影再び改まる」と、いとあざやかに気高きこゑにて、うちずんじ給ふと聞きて、御覧じ上げたれば、明け方の空澄み渡れるに、星の光もけざやかにて、いと神さびたり。いかに見えつる御夢ならんと怪しく思さるれど、人にものたまはず。とまれかくまれと、いよいよ御学問をぞせさせ給ふ。




土御門殿の宮(邦仁くにひと親王。後の第八十八代後嵯峨天皇)は二十歳も越えられましたが、元服の予定もございませんでした。城興寺(現京都市南区にある寺)の宮僧正真性(第七十七代後白河院の孫で、以仁王もちひとわうの子)とよばれておりました者が、御弟子にしたいと頼んで来られたので、それもよいかと、女院(第八十二代後鳥羽院の後宮、承明門院。源在子ざいし)にもそれとなく申し上げましたが、僧にするおつもりはまったくございませんと申されました。その冬の頃、宮はたいそうお忍びで、石清水の社(現京都府八幡市にある石清水八幡宮)に参詣し、念誦を静かに唱えられて、少しまどろんだ時、神殿の中から、「椿葉の影再び改まる([永く栄えること])」と、とてもはっきりした気高い声で、申されるのが聞こえて、空を見上げると、明け方の空は澄み渡り、星の光もくっきりと、とても神秘的な眺めでございました。何を知らせる夢かと不思議に思われましたが、人にも話すことなく、ともかくも、ますます学問に励まれたのでございます。


続く


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by santalab | 2013-12-19 08:40 | 増鏡 | Comments(3)
Commented by 島根出雲の語部 at 2014-03-10 22:44 x
 やはり安来の清水寺のほうが用明天皇の御世に出来たというのだから京都の清水寺よりも遥かに歴史は古い。しかも古代神話の御膝元。もう少し市民が教養があればいかようにも観光都市としての再生ポテンシャルが全国で最も高い地域だと思うのだが。
Commented by 民俗学者 at 2015-06-23 23:34 x
 その島根県(旧出雲国東部)安来市にはいまだに語部が潜んでいて、K博士はその内情に詳しいという。
Commented by 北朝鮮の水爆に十神山も激怒 at 2016-01-08 02:50 x
青き花咲く大地
気高きわが故郷よ
響け 歓喜の歌
神の加護は われらとともにあり続けん
ガーレ=ガミロン
讃えよ 祖国の勝利を

気高きは勝利の意志
示せ 遍く宇宙に
理想 貫く愛
神の加護は われらとともにあり続けん
ガーレ=フェゼロン
誇りある鋼の国家

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