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「義経記」忠信都へ忍び上る事(その5)

斯様かやう梶原かぢはらうとまれ、腹を据ゑ兼ねて、六波羅へまうさんと思ひつつ、五日の夜に入りて、半物はしたもの一人召し具して、六波羅へまゐり、江馬えまの小四郎を呼び出だして、この由伝へければ、北条ほうでうにかくと申されたり。「時刻を移さず寄せて捕れ」とて、二百騎の勢にて四条しでう室町にぞ押し寄せたり。昨日きのふ一日今宵こよひ夜もすがら、名残りの酒とて強ひたりければ、前後も知らず臥したりけり。頼むをんなは心変はりして失せぬ。常に髪けづりなどしける半物はしたもののありけるが、忠信ただのぶが臥したる所へ走り入りて、荒らかに起こして、「かたき寄せてさうらふぞ」と告げたりける。




女は梶原(梶原景茂かげもち)に嫌われて、我慢ならなくなって、六波羅(六波羅守護)に知らせようと、五日の夜になってから、半物([下女・召使い])を一人連れて、六波羅に参り、江馬小四郎(北条義時よしとき。北条政子の弟)を呼び出して、佐藤忠信よしのぶの居場所を知らせようと、北条(義時よしとき)に伝えました。北条(義時)が「すみやかに押し寄せて忠信を捕らえよ」と命じたので、二百騎の勢で四条室町に押し寄せました。昨日は一日一晩中、名残りの酒を勧められて、忠信は前後不覚で寝ていました。頼る女は心変わりしていなくなりました。いつも髪結いなどをしていた半物([下女・召使い])がいましたが、忠信が寝ていた部屋に走り入って、荒々しく起こして、「敵が寄せて来ました」と知らせました。


続く


by santalab | 2013-12-31 21:01 | 義経記

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