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「義経記」忠信最期の事(その8)

とてもかくても遁れぬものゆゑに、弱りて後押さへて首を捕られんも詮なし。今は腹切らばやと思ひて、太刀を打ち振りて縁につつと上がり、西向きに立ち、合掌がつしやうしてまうしけるは、「小四郎殿へ申しさうらふ。伊豆いづ、駿河の若党わかたうの、殊の外の狼藉らうぜきに見え候ふを、万事をしづめてかうの者の腹切るやうを御覧ぜよや。東国の方へも主に心ざしもあり、珍事中夭ちゆうえうにも会ひ、また敵に首を捕らせじとて自害する者の為に、これこそ末代の手本よ、鎌倉殿にも自害の様をも、最期の言葉をも見参に入れてべ」と申しければ、「さらばしづかに腹を切らせて首を取れ」とて、手綱を打ち捨てこれを見る。




どうしようが逃れられないのなら、弱った後に押さえられて首を捕らるのはつまらないこと。今は腹を切ろうと思って、太刀を打ち振って縁にささと上がり、西向きに立ち、合掌して申すには、「小四郎殿(北条義時よしとき)に申す。伊豆、駿河の若党が、思いの外に狼藉を働いてように思えるが、万事を鎮めて剛の者が腹切る様を見よ。東国の方にも心ある者もいるだろう、珍事中夭([思いがけない災難])に会い、また敵に首を捕らせまいと自害する者のためにも、末代の手本となろうぞ、鎌倉殿(源頼朝)にも自害の様も、最期の言葉も伝えてほしい」と申せば、北条義時は「ならば静かに腹を切らせてから首を取ろう」と言って、手綱を離しこれを見ました。


続く


by santalab | 2014-02-20 21:06 | 義経記

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