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「義経記」忠信吉野山の合戦の事(その4)

川連かはつら法眼ほふげんこれを聞きて、賎しげに言はれたりと思ひて、悪所も嫌はず、谷越しにおめいてぞかかる。忠信ただのぶこれを見て、六人の者どもに逢ひてまうしけるは、「これらを近付けては悪しかるべし。御辺たちはこれにて敵の問答もんだふをせよ。それがしは中差し二つ三つに弓持ちて、細谷川ほそたにがは水上みなかみを渡り、敵の後ろに狙ひ寄り、かぶら一つぞ限りにてあらん。楯突いてたる悪僧が、首の骨か押し付けかを一矢射て、残りの奴ばら追ひ散らし、楯取りて打ちかづき、中院ちゆうゐんの峰に上りて、突き迎へて、敵に矢を尽くさせ、御方も矢種の尽きば、小太刀抜き、大勢おほぜいの中へ走り入りて、斬り死に死ねや」とぞまうしける。




川連法眼はこれを聞いて、馬鹿にされたと思い、悪所にも関わらず、谷越しに喚んで攻めかかりました。忠信(佐藤忠信)はこれを見て、六人の者どもを前にして申すには、「やつらを近付けては面倒だ。お主たちはここにて敵と問答をしろ。わたしは中差し(征矢)を二三本に弓を持ち、細谷川の上流を渡り、敵の後ろに回って射てやろう。鏑矢は一本しかない。楯を並べている悪僧([武勇に秀でた荒々しい僧。荒法師])たちの、首の骨か押し付け([押付の板]=[鎧の背の上部])を一矢射て、残りの奴らを追い散らし、楯を奪い取って、中院の峰に上り、防戦して、敵に矢を尽くさせ、味方も矢種が尽きれば、小太刀を抜き、大勢の敵の中へ走り入って、斬りまくって死ね」と申しました。


続く


by santalab | 2014-02-25 23:27 | 義経記

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