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「義経記」忠信吉野山の合戦の事(その12)

大の法師ほふし攻め立てられて、ひたひに汗を流し、今は斯うとぞ思ひける。忠信ただのぶは酒も飯もしたためずして、今日けふ三日になりければ、打つ太刀も弱りける。大衆だいしゆはこれを見て、「よしや覚範かくはん勝つに乗れ、源氏は受太刀うけかたなに見え給ふぞ。すきなあらせそ」と、力を添へてぞ斬らせける。しばしは進みて斬りけるが、いかがしたりけん、これも受刀うけかたなにぞなりにける。大衆だいしゆこれを見て、「覚範こそ受刀に見ゆれ。いざや下り合ひて助けん」と言ひければ、「もつともさあるべし」とて、落ち合ふ大衆誰々たれたれぞ。医王いわう禅師ぜんじ常陸ひたちの禅師、主殿助とのものすけ薬院やくいかみ返坂かへりさか小聖こひじり治部ぢぶ法眼ほふげん山科やましなの法眼とて、究竟くつきやうの者七人おめきて懸かる。




大の法師(覚範かくはん)は攻め立てられて、額から汗を流し、防ぐのがやっとでした。忠信(佐藤忠信)は酒も飯も口にせず、今日で三日目でしたので、打つ太刀にも力が入りませんでした。大衆([僧])はこれを見て、「いいぞ覚範が優勢だ、源氏は受太刀に見えるぞ。隙を見せるな」と、応援して戦わせました。しばらくは覚範が攻めていましたが、どうしたことか、いつの間にか覚範が劣勢になっていました。大衆([僧])はこれを見て、「覚範の方が受刀のようだ。どうだ下り合って覚範を助けよう」と言うと、「そうしよう」と、助太刀する大衆は誰かというと。医王禅師、常陸禅師、主殿助、薬院頭、返坂小聖、治部法眼、山科法眼という、究竟の者七人が喚きながら忠信に攻めかかりました。


続く


by santalab | 2014-02-26 00:13 | 義経記

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