熊谷猛く思へども、薙刀にあひしらひかねて討手に入る。板東方、「熊谷討たすな」と喚きけれども、橋桁は狭し、寄る者ぞなかりける。熊谷、但馬の律師と組んで首を捕らんとするところに、但馬が小法師に菊珍、熊谷を打つ間に、但馬の律師落ち合ひ、熊谷が首を捕る。熊谷を始めとして七人、目の前にて討たれにけり。
熊谷(熊谷直国)は勇敢な者でしたが、薙刀に慣れていなかったので攻め入りました。坂東方は、「熊谷(直国)を討たすな」と大声上げましたが、橋桁は狭く、近付くことができませんでした。熊谷(直国)は、但馬律師と組んで首を捕ろうとするところに、但馬律師の小法師菊珍が、熊谷(直国)を打つ間に、但馬律師が落ち合い、熊谷(直国)の首を捕りました。熊谷(直国)をはじめ七人が、目の前で討たれました。
(続く)