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Santa Lab's Blog


「松浦宮物語」一(その9)

とても、いと侘しと思したれば、人の思はむことの苦しさに、生ける心地もせねど、さてもえ乱れず、長き夜すがら歎き明かして、かくなむ。

いたづらに あかせるよはの ながき夜の あかつき露に ぬれかゆくべき

いかばかり思ひかへしてか、「その名は云はじ」とうち泣く様も心深げなるを、さすがにあはれと見給ふ。
あかつきの 露のその名し もらさずば われわすれめや よろづ世までに




弁少将はとても、悲しくなりました、神奈備の皇女が気付いていなかったことが心苦しく、生きた心地もしませんでしたが、心乱したところで仕方のないことでした、長夜を一晩中泣き明かして、こう詠みました。

徒らに長夜を明かしてしまいました。暁の露に濡れたまま、帰るしかありません。

どれほど思い返したことでしょう、「あなたの名は誰にも申しません」と泣く姿がたいそう思い詰めた様子でしたので、神奈備の皇女もさすがにかわいそうに思うのでした。
暁の露に濡れながらその名を漏らさないと言ったあなたのことは、いつまでも忘れませんから。


続く


by santalab | 2014-05-13 20:37 | 松浦宮物語

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