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Santa Lab's Blog


「竹取物語」(その28)

各々仰せ承りて罷りぬ。「『竜の首の珠取り得ずは、帰りな』と、のたまへば、いづちもいづちも、足の向きたらむ方へ往なむず」「かかる数寄事をし給ふこと」とそしり合へり。賜はせたる物、各々分けつつ取る。あるいはおのが家に籠り居、あるいはおのが行かまほしき所へ往ぬ。「親、君と申すとも、かくつきなきことを給ふこと」と、事ゆかぬものゆゑ、大納言を誹り合ひたり。「かぐや姫据ゑむには、例やうには見にくし」とのたまひて、麗しき屋を造り給ひて、漆を塗り、蒔絵して壁し給へて、屋の上には糸を染めて色々葺かせて、内々のしつらひには、言ふべくもあらぬ綾織物に絵を描きて、間ごと貼りたり。もとの妻どもは、かぐや姫を必ず婚はむ設けして、ひとり明かし暮らし給ふ。




家来たちはそれぞれに大伴御行おほとものみゆきの命令を受けて出かけました。大納言に「『竜の首の珠を取るまでは、帰ってくるなよ』と、言われたので、どこへなりとも、足の向く方へと歩いていくことにしましょう」(「往なむず」=「往なむとす」)と言って出かけたものの、「こんなとんでもない役目はごめんだ」と悪口をいい合ったのでした。大伴御行から旅の用意としてもらった品物も、家来たちで分け合いました。そして、ある者は自分の家に籠ってしまい、ある者は行きたいと思う場所へ往ってしまいました。「いくら親や主人が言うこととはいえ、こんな無茶なことを命じるとはどういうことか」と、まったく道理に合わず理不尽なことだと、大納言のことを罵り合いました。一方の大伴御行といえば、「かぐや姫を住まわせる屋敷は、並みのものではみっともない」と言って、美しい家屋を造って、柱には漆を塗り、壁には蒔絵を施し、天井には糸を染めて色とりどりに覆い、内装の飾りには、言葉で表せないほど華麗な綾織物に絵を描いて、柱と柱の間に貼りました。大伴御行の前妻たちを、かぐや姫と必ずや結婚するからと大納言の家から追い出して、独り日を過ごすようになりました。


続く


by santalab | 2014-05-16 08:36 | 竹取物語

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