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Santa Lab's Blog


「竹取物語」(その32)

三、四日吹きて、吹き返し寄せたり。浜を見れば、播磨の明石の浜なりけり。大納言、南海の浜に吹き寄せられたるにやあらむと思ひて、息づき伏し給へり。船にあるをのこども、国に告げたれども、国の司まうとぶらふにも、え起き上がり給はで、船底に伏し給へり。松原に御むしろ敷きて、下ろし奉る。その時にぞ、南海にあらざりけりと思ひて、からうして起き上がり給へるを見れば、風いと重き人にて、腹いとふくれ、こなたかなたの目には、すももを二つつけたるやうなり。これを見奉りてぞ、国の司もほほ笑みたる。




風は、三、四日吹き続いて、その後に吹き返しの風が寄せました。浜を見ると、播磨(兵庫県の西南部)の明石の浜でした。大納言(大伴御行おほとものみゆき)は、南海の浜に吹き寄せられたのではないと思っていたので、息はしていましたが伏したままでした。船に乗っていた男たちが、浜に着いたことを国に知らせましたが、国司がやって来た際にも、起き上がることができずに、船底に倒れ伏したままでした。男たちは大納言を船から降ろして、松の生える浜に筵を敷いて寝かせました。その時にやっと、南海ではないことに気がついて、やっとのことで起き上がるのを見れば、風病(脳卒中らしい)の重病者のようで、左右の目は、李を二つ付けたように飛び出していました。これを見て、国司も笑ってしまいました。


続く


by santalab | 2014-05-16 17:28 | 竹取物語

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