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「承久記」公卿罪科の事(その7)

佐々木の中納言有雅ありまさの卿は、小笠原具し奉りて、甲斐の国稲積いなづみの庄内小瀬こせ村と言ふ所にて斬らんとす。「二位殿に申したる旨あり。その御返事、今日にあらんずれば、今二時の命を延べ給へ」とのたまひけるを、「ただ斬れ」とて斬りてけり。一時ばかりありて、「有雅の卿斬り奉るな」と、二位殿の御返事あり。宿業力なしとは言ひながら、一時の間を待たずして斬られけるこそ哀れなれ。小笠原も、今二時の命と手を合はせて乞ひ給ふを斬りたるこそ情けなく思ゆれ。三宝の知恵しるべも知り難く、人望にもうたてしとぞ見えし。




佐々木中納言有雅卿(源有雅)は、小笠原(長清ながきよ)に連れられて、甲斐国稲積庄小瀬村(現山梨県甲府市小瀬町)と言う所で斬られようとしていました。源有雅は「二位殿(北条政子)に申し上げたことがあるのだ。返事が、今日にもあるだろうから、あと二時(四時間)斬るのを待ってくれ」と懇願ましたが、「斬ってしまえ」と言って斬られてしまいました。一時(二時間)ばかりあって、「有雅卿を斬ってはなりません」と、二位殿の返事がありました。宿業([現世に応報を招く原因となった前世の善悪の行為])であり仕方のないことでしたが、一時を待たずに斬られたのは哀れなことでした。小笠原(長清)が、今二時命を延べよと手を合わせて懇願した長清を斬ったことも情けのないものでした。三宝([仏・法・僧])の知恵にも暗く、人望もないように思われました。


続く
by santalab | 2014-05-20 08:00 | 承久記

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