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「太平記」結城入道堕地獄事(その6)

その後二つのまないたを取り除けて、紙の如くに押しひらめたる罪人を、くろがねの串に刺し貫き、ほのほの上にこれを立てて、打ちかへし打ち返しあぶる事、ただ庖人ばうじん肉味にくみ調てうするに不異。至極炙り乾かして後、また俎の上に押し平めて、臠刀らんたうくろがね魚箸まなばしを取り副へて、寸分つだつだにこれを切り割いて、あかがねの中へ投げ入れたるを、牛頭馬頭ごづめづの鬼ども箕を持つて、「活々くわつくわつ」と唱へてこれをけるに、罪人たちまちによみがへつてまたもとの形になる。時に阿放羅刹あはうらせつ鉄のしもとを取つて、罪人に向かひ、怒れることばを出だして、罪人を責めていはく、「地獄非地獄、汝が罪責汝」と、罪人この苦に責められて、泣かんとすれどもなんだ落ちず。猛火みやうくわまなこを焦がすゆゑに、叫ばんとすれども声出でず。鉄丸てつぐわんのんどを塞ぐ故に、もし一時の苦患くげんを語るとも、聞く人は地に倒れつべし。




その後二つの俎を取り除けると、紙のように押し平らげられた罪人を、鉄の串に刺し貫いて、炎の上にこれを立てて、返し返し炙る様は、庖人([料理人])が肉を調理しているようでした。すっかり炙り乾かすと、また俎の上に押し平めて、臠刀([肉を切るのに用いる刀])に鉄の魚箸で、寸分([寸刻み])にこれを切って、銅の箕([バスケット])の中へ投げ入れました、牛頭馬頭の鬼どもが箕を持って、「活々」と唱えてこれを簸る([くずを取り除く])と、罪人たちまちに蘇ってまたもとの形になりました。この時阿放羅刹([地獄の牢番])は鉄の楉([鞭])を持って、罪人に向かい、怒りの言葉を発して、罪人を責めて言うには、「地獄を地獄というなかれ、お前の罪でお前は責められているのだからな」と言いました、罪人はこの苦に責められて、泣こうとしましたが涙は落ちませんでした。猛火が眼を焦がして乾いてしまうからでした。叫ぼうとしても声は出ませんでした。鉄丸が喉を塞いでいました、もし一時でもこの苦患([地獄におちて受ける苦しみ])を語れば、聞く人はたちまち卒倒してしまうほどでした。


続く
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by santalab | 2014-05-20 08:41 | 太平記 | Comments(0)

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