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「太平記」結城入道堕地獄事(その9)

「『若有聞法者無一不成仏にやくうもんほふしやむいちふじやうぶつ』は、如来の金言、この経の大意なれば、八寒八熱の底までも、悪業あくごふ猛火みやうくわたちまちに消えて、清冷せいりやうの池水まさに湛へん」と、導師だうし称揚しようやうの舌を延べて玉を吐き給へば、聴衆随喜ずゐきの涙を流して袂をうるほしけり。これしかしながら地蔵菩薩ぢざうぼさつ善巧ぜんげう方便にして、かの有様を見せしめて追善を致さしめんが為なり。結縁けちえんの多少に依つて、利生りしやう厚薄こうはくはありとも、仏前仏後の導師、大慈大悲の薩埵さつた値遇ちぐし奉らばば真諦俗諦善願しんたいぞくたいぜんぐわんの望みを達せん。今世後世こんせごせよく引導いんだうの御誓ひ頼もしかるべき御事なり。




「『若有聞法者無一不成仏』(法を聞く者は一人として成仏しない者はいない。『法華経』方便品)は、釈迦如来の金言、法華経の大意ですれば、八寒地獄八熱地獄の底までも、悪業の猛火はたちまちに消えて、清冷の池水は湛えることでしょう」と、導師が称揚([称賛])言葉を述べると、聴衆は随喜の涙を流して袂を濡らしました。これは地蔵菩薩が善巧([人々の機根に応じて巧みに善に教え導き、仏の利益を与えること])の方便([人を真実の教えに導くため、仮にとる便宜的な手段])でした、結城入道(結城宗広むねひろ)の有様を見せて追善供養をさせようとしてのことでした。結縁([仏法と縁を結ぶこと])の多少により、利生([仏・菩薩が衆生に与える利益])に厚薄はありますが、仏前仏後の導師が、大慈大悲の薩埵(観世音菩薩)に値遇([仏縁あるものにめぐりあうこと])して真諦俗諦善願(真諦行こう絶対不変の真理。と俗諦=世間の道理。の願 )された望みを達することでしょう。今世後世を引導([衆生を導いて悟りの道に入らせること])なされた誓いは頼もしいものでした。


続く


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by santalab | 2014-05-20 08:53 | 太平記 | Comments(0)

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