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「太平記」新田義貞落越前府城事(その1)

左中将さちゆうじやう義貞よしさだ朝臣・舎弟脇屋右衛門うゑもんすけ義助よしすけは、金崎かねがさきじやう没落の後、杣山そまやまの麓瓜生うりふたちに、あるもなきが如くにてをはしましけるが、いつまでかかくていたづらに時を待つべき。所々に隠れ居たる敗軍の兵を集めて国中へ打ち出で、吉野に御座ある先帝の宸襟しんきんをも休めまゐらせ、金崎にて討たれし亡魂の恨みをも散ぜばやと思はれければ、国々へひそかに使ひを通じて、旧功のともがらを集められけるに、竜鱗りようりんに付き、鳳翼ほうよくぢて、宿望を達せばやと、蟄居に時を待ちける在々所々のつはものども、聞き伝へ聞き伝へ抜け抜けに馳せ集まりけるほどに、馬・物の具なんどこそきらきらしくはなけれども、心ばかりはいかなるはんくわい周勃しうぼつにも劣らじと思へる義心金鉄ぎしんきんてつの兵ども、三千余騎に成りにけり。




左中将義貞朝臣(新田義貞)・弟の脇屋右衛門佐義助(脇屋義助)は、金崎城(現福井県敦賀市にあった山城)没落の後、杣山(現福井県南条郡南越前町にある山)の麓の瓜生の館に、いないが如く隠れ住んでいましたが、いつまでこうして無駄に時を待たなくてはならないのか。所々に隠れている敗軍の兵を集めて国中へ打ち出て、吉野におられる先帝(第九十六代・南朝初代後醍醐天皇)の宸襟([天子の心])も休めさせ、金崎にて討たれた亡魂の恨みを晴らそうと思って、国々へ密かに使いを遣わして、旧功の者どもを集めると、竜鱗に従い付き、鳳翼にすがって、宿望を達しようと、蟄居して時を待っていた在々所々の兵たちが、聞き伝え聞き伝えして抜け抜け([愚かなこと])に馳せ集まり、馬・物の具([武具])こそりっぱなものではありませんでしたが、心ばかりはどんな武士樊かい([秦末から前漢初期にかけての武将])・周勃([国の秦末から前漢初期にかけての武将、政治家])にも劣らない思う義心([正義の心])金鉄([非常に堅固なことのたとえ])なる兵どもは、三千騎余りになりました。


続く
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by santalab | 2014-05-25 21:48 | 太平記 | Comments(0)

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