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「太平記」新田義貞落越前府城事(その10)

我先に渡さんと打ち臨みたる兵三千余騎これを見て、一度にさつと打ち入れて、弓の本筈末筈もとはずうらはず取り違へ、馬の足の立つ所をば手綱をさしくつろげて歩ませ、足の立たぬ所をば馬のかしらをたたき上げて泳がせ、真一文字に流れを切つて、向かうの岸へ懸け上げたり。かつら新左衛門しんざゑもんは、御方の勢に二町にちやうばかり先立ちて渡しければ、敵の為に馬の両膝もろひざ流れて、歩立かちだちに成つて敵六騎に取り籠められて、すでに討たれぬと見へけるところに、宇都宮が郎等らうどうせい新左衛門しんざゑもん為直ためなほ馳せ合つて、敵二騎斬つて落とし、三騎に手負はせ、葛の新左衛門をば助けてけり。寄する勢も三千余騎、防ぐ勢も三千余騎、大将はいづれも名をしむ源氏一流の棟梁とうりやうなり。しかも馬の懸け引き容易き在所なれば、敵御方六千余騎、前後左右に追うつかへしつ入り乱れ、半時はんじばかりぞ戦ひたる。




我先に渡そうと川に向かう兵三千騎余りはこれを見て、一度にさっと打ち入れて、弓の本筈末筈([本筈=弓を射るときに下になるほうの筈。と末筈=上部])を持ち、馬の足の立つ所をば手綱を緩めて歩ませ、足の立たない所は頭をたたき上げて泳がせ、真一文字に流れを切って、向こう岸へ懸け上がりました。葛新左衛門は、味方の勢に二町(約200m)ばかり先立って渡りましたが、敵の為に馬の両膝を射られて、歩立ちになって敵六騎に取り籠められて、すでに討たれぬと思われたところに、宇都宮(宇都宮泰藤やすふぢ)の郎等([家来])に清新左衛門為直と言う者が馳せ合って、敵二騎斬って落とし、三騎に手負わせ、葛新左衛門を助けました。寄せる勢も三千余騎、防ぐ勢も三千余騎、大将はいずれも名を惜しむ源氏一流の棟梁でした。しかも馬の懸け引き容易い場所でしたので、敵味方六千騎余りが、前後左右に追っては返し入り乱れ、半時(約一時間)ばかり戦いました。


続く
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by santalab | 2014-05-26 08:25 | 太平記 | Comments(0)

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