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「太平記」新田義貞落越前府城事(その11)

かくてはただ命を限りの戦ひにて、いつ勝負あるべしとも見へざりけるところに、杣山そまやま河原かはらよりまはりける三峯みつみねの勢と、大塩おほしほより下る山法師やまほふしと差し違ひて、敵陣の後ろへ廻り、府中に火を懸けたりけるに、尾張をはりかみの兵三千余騎、敵を新善光寺しんぜんくわうじの城へ入り替はらせじと、府中を指して引つかへす。義貞よしさだ朝臣の兵三千余騎、逃ぐる敵を追つすがうて、透間もなく攻め入りける間、城へ籠もらんと逃げ入る勢ども、己がこしらへたる木戸逆茂木きどさかもぎに支へられて、城へ入るべき逗留とうりうもなかりければ、新善光寺の前を、府より西へ打ち過ぐる。伊予のかみの勢千余騎は、若狭を指して引きければ、尾張の守の兵二千余騎、織田・大虫おほむしを打ち過ぎて、足羽あすはの城へぞ引かれける。すべてこの日一時の戦ひに、府の城すでに攻め落とされぬと聞き及びて、いまだ敵も寄せざる先に、国中の城の落つる事、同時に七十三しちじふさん箇所なり。




こうなってはただ命の限りの戦いとなって、いつ勝負が付くとも思えませんでしたが、杣山(現福井県南条郡南越前町にある山)河原から廻り来た三峯(現福井県鯖江市にあった三峯城)の勢が、大塩(現福井県越前市にある大塩八幡宮)より下った山法師と入れ替わり、敵陣の後ろへ廻り、府中に火を懸けたので、尾張守(斯波しば高経たかつね)の兵三千騎余りは、敵(南朝方)を新善光寺城(現福井県越前市にあった山城)へ入れ替わらせまいと、府中を指して引き返しました。義貞朝臣(新田義貞)の兵三千余騎余りは、逃げる敵を追いかけて、透間もなく攻め入ったので、城へ籠もろうと逃げ入る勢どもは、己がこしらえた木戸逆茂木(敵の侵入を防ぐための障害物)に阻まれて、城へ入ることができずに、新善光寺城の前を、国府より西へ打ち過ぎました。伊予守(斯波家兼いへかね)の勢千騎余りは、若狭(現福井県南部)を指して退けば、尾張守(斯波高経)の兵二千騎余りは、織田(現福井県丹生にう郡越前町)・大虫(現福井県越前市)を打ち過ぎて、足羽城(現福井県福井市にあった山城)へ落ちて行きました。すべてこの日一時の戦いで、国府の城がすでに攻め落とされたと聞いて、まだ敵も寄せる前に、国中の城を落ちること、同時に七十三箇所でした。


続く
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by santalab | 2014-05-26 08:30 | 太平記 | Comments(0)

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