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「太平記」師賢登山の事付唐崎浜合戦の事(その5)

岡本房をかもとばうの幡磨の竪者りつしや快実くわいじつ遥かにこれを見て、まへに突き並べたる持楯もちだて一帖でふ岸破かつぱと踏みたふし、二尺八寸の小長刀水車みづぐるままはしてをどり懸かる。海東かいとうこれを弓手ゆんでに受け、兜の鉢を真つ二つに打ち割らんと、隻手打かたてうちに打ちけるが、打ちはづして、袖の冠板かふりいたより菱縫ひしぬひの板まで、片筋交かたすぢかいに懸けず斬つて落とす。二の太刀を余りに強く斬らんとて弓手ゆんであぶみを踏みり、すでに馬より落ちんとしけるが、乗りなほりけるところを、快実くわいじつ長刀の柄を取り延べ、内兜へ切つ先上がりに、二つ三つ隙間もなく入れたりけるに、海東あやまたず喉笛のどぶゑを突かれて馬よりまつさかさまに落ちにけり。快実やがて海東が総角あげまきに乗り懸かり、びんの髪を掴んで引き懸けて、首掻き斬つて長刀に貫き、武家の大将一人討ち捕りたり、物始めよし、とこころうで、あざ笑うてぞ立つたりける。




岡本房の幡磨の竪者([仏教の理論を論議する席で、問者の質問を教理に沿って解明し答える役の僧])快実遥かにこれを見て、前に突き並べた持楯一帖がばと踏み倒し、二尺八寸の小長刀をぶん回して飛びかかりました。海東(海東左近将監)はこれを弓手([左手])に受け、兜の鉢を真っ二つに打ち割ろうと、片手打ちに打ち下ろしましたが、打ち外して、袖の冠板([袖や栴檀板=太刀を振るう時、脇を守る防具。、または小手のいちばん上の板])より菱縫の板([兜の錏、鎧の袖・草摺などの最も下の板])まで、片筋交い懸けず斬って落としました。二の太刀を余りに強く斬ろうとして弓手([左])の鐙を踏み折って、あわや馬から落ちるところでしたが、乗り直すところを、快実は長刀の柄を長く取り、内兜([兜の額の部分])へ振り上げて、二つ三つ隙間もなく差しし入れたので、海東あやまたず喉笛を突かれて馬よりまつさかさまに落ちました。快実すぐに海東の総角([鎧の背や兜の鉢の後ろの環につけた、揚巻結びの緒])に馬乗りになり、鬢([頭の左右側面の髪])の髪を掴んで引き上げて、首を掻き斬って長刀に貫き、武家の大将一人を討ち捕ったぞ、事始めよし、とよろこんで、あざ笑って立っていました。


続く
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by santalab | 2014-06-01 09:47 | 太平記 | Comments(0)

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