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「太平記」俊基被誅事並助光事(その5)

工藤左衛門幕の内に入つて、「余りに時の移り候ふ」と勧むれば、俊基としもと畳紙たたうがみを取り出だし、首のまはり押しのごひ、その紙を押し開いて、辞世のじゆを書き給ふ。

古来一句。無死無生。万里雲尽。長江水清。

筆を差し置いて、びんの髪をなで給ふほどこそあれ、太刀陰後ろに光れば、首はまへに落ちけるを、みづから抱へて伏し給ふ。これを見奉る助光が心の内、たとへて云はん方もなし。さて泣く泣く死骸をさうし奉り、空しき遺骨ゆゐこつを首に懸け、形見の御文身にへて、泣く泣くきやうへぞ上りける。




工藤左衛門(工藤高景たかかげ)は大幕の内に入って、「そろそろ時間だ」と促したので、俊基(日野俊基)は畳紙([折り畳んで懐中に入れ、鼻紙や詩歌の詠草などに用いる紙])を取り出し、首の回りを押し拭って、その紙を押し開いて、辞世の頌([詩])を書きました。

昔から言うではないか、この世には死もなく生もない、万里の果てまで雲は続き、長江の水があくまで清いように。

筆を差し置いて、鬢([耳ぎわの髪])の髪をなでるほどに、太刀の陰が後ろに光れば、首は前に落ちるのを、自ら抱えて倒れ伏しました。これを見る助光の心の内は、たとえようもないものでした。その後泣く泣く死骸を火葬し、空しくなった遺骨を首に懸け、形見の文を携えて、泣く泣く京に上りました。


続く
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by santalab | 2014-06-04 08:14 | 太平記 | Comments(0)

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