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「太平記」船上合戦事(その2)

城中の勢どもは、敵に勢の分際を見へじと、木陰にぬはれ伏して、時々射手いてを出だし、遠矢とほやを射させて日を暮らす。かかる所に一方の寄せ手なりける佐々木の弾正だんじやう左衛門さゑもんじよう、遥かの麓に控へて居たりけるが、いづ方より射るとも知らぬ流れ矢に、右のまなこを射抜かれて、矢庭やにはに伏して死にけり。これによつてその手のつはもの五百余騎色を失うていくさをもせず。佐渡の前司ぜんじ八百はつぴやく余騎にて搦め手へ向かひたりけるが、にはかに旗を巻き、兜を脱いで降参かうさんす。隠岐おきの判官はなほかやうの事をも不知、搦め手の勢は、定めて今は攻め近付きぬらんと心得て、一の木戸口に支へて、新手を入れ替へ入れ替へ、時移るまでぞ攻めたりける。




船上せんじやう山城の勢たちは、敵に勢の分際([数量])を知られまいと、木陰に上ったり地に伏して、時々射手を出して、遠矢に射させて日を送りました。そうこうするところに寄せ手である佐々木弾正左衛門尉(佐々木昌綱まさつな)が、城から遠く離れた麓に控えていましたが、どこから射られたとも知れない流れ矢に、右目を射抜かれて、たちまち倒れて死んでしまいました。これにより寄せ手の兵五百騎は顔色を失って軍をすることはありませんでした。佐渡前司(土肥佐渡前司)は八百騎余りで搦め手([城の裏門や敵陣の後ろ側を攻める軍勢])に向かっていましたが、急に旗を巻き、兜を脱いで降参しました。隠岐判官(佐々木清高きよたか)はそんなことも知らないまま、搦め手の勢は、きっと今は敵に攻め近付いているだろうと思い、一の木戸口([城・柵などの出入り口])を攻めて、新手を入れ替えながら、時が移る間(二時間)攻めました。


続く
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by santalab | 2014-06-05 20:42 | 太平記 | Comments(0)

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