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「太平記」小弐与菊池合戦事付宗応蔵主事(その1)

菊池掃部かもんの助武俊たけとしは、元来宮方にて肥後の国にありけるが、小弐が将軍しやうぐん方へまゐる由を聞きて道にて打ち散らさんと、その勢三千余騎にて水木みづきの渡しへぞ馳せ向かひける。小弐太郎は、夢にもこれを知らずして、小舟七艘に込み乗つて、我が身は先づ向かうの岸に着く。畦篭あぜくら豊前のかみ以下いげはいまだ越えず、控へて舟の指し戻す間を相待ちけるところに、菊池が兵三千余騎、三方さんぱうより押し寄せて、川中へ追つばめんとす。畦篭が兵百五十騎、とても遁れぬところなりと、一途いちづに思ひ定めて、菊池が大勢の中へ懸け入つて、一人も残らず討ち死にす。小弐太郎は川向かはむかひより、これを見けれども、大河を中に隔てて、舟ならでは渡るべき便りもなければ、いたづらに頼み切つたる一族若党わかたうどもを敵に取り籠めさせける心の内、遣る方なくして無念なる。遂に舟ども近辺きんぺんに見へざりければ、怒りを抑へて将軍へぞまゐりける。




菊池掃部助武俊(菊池武俊)は、もともと宮方(南朝)で肥後国にいましたが、、小弐が将軍(足利尊氏)方に参ったと聞いて途中で追い払おうと、その勢三千騎余りで水木の渡し(現福岡県甘木市)へ馳せ向かいました。小弐太郎(少弐頼尚よりなほ)は、夢にもこれを知らずに、小舟七艘に乗って、自身がまず向こう岸に着きました。畦篭豊前守以下はまだ川を越えず、岸で待って舟が戻ってくるのを待っていましたが、菊池(武俊)の兵三千騎余りが、三方より押し寄せて、川中へ追い落とそうとしました。畦篭の兵百五十騎は、とても逃れられないと、一心に思い切り、菊池(武俊)の大勢の中に懸け入って、一人残らず討ち死にしました。小弐太郎(頼尚)は川向いより、これを見ていましたが、大河(筑後川)に隔てられて、舟なしに渡ることもできませんでした、無駄に頼み切った一族若党(侍)たちを敵に取り籠められた心の内を、どうすることもできずただただ無念でした。遂に舟は近くになく、小弐(頼尚)は怒りを抑えて将軍(足利尊氏)方へ参りました。


続く
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by santalab | 2014-06-06 20:01 | 太平記 | Comments(0)

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