Santa Lab's Blog


「太平記」赤坂城軍の事(その10)

「さらば」とて城中じやうちゆうおほきなる穴を二丈ばかり掘りて、このあひだ堀の中に多く討たれて臥したる死人しびとを二三十人穴の中に取り入れて、その上に炭・たきぎを積んで雨風の吹きそそぐ夜をぞ待ちたりける。正成が運や天命に叶ひけん、吹く風にはかにいさごを上げて降る雨更にしのを突くが如し。夜色やしよく窈溟えうめいとして氈城せんぜい帷幕ゐばくる。これぞ待つところの夜なりければ、城中じやうちゆうに人を一人残し留めて、「我ら落ち延びん事四五町にも成りぬらんと思はんずる時、城に火を懸けよ」と云ひ置いて、皆物の具を脱ぎ、寄せ手に紛れて五人三人別々べちべちになり、敵の役所のまへ軍勢の枕のうへを越えて閑々しづしづと落ちけり。




「ならば」と城中にきな穴を二丈(約6m)ばかり掘って、この間堀の中で多く討たれて死んだ死人を二三十人穴の中に取り入れて、その上に炭・薪を積んで雨風の吹きそそぐ夜を待ちました。正成(楠木正成)の運が天命に叶ったのか、吹く風が急に砂を巻き上げて降る雨は激しく篠しのを突く([篠竹が突き立つように雨が激しく降る])ようでした。夜は窈溟([雨が降ってとても暗いこと])として氈城([苔生した城])では皆帷幕([垂れ幕と引き幕])を立てました。ちょうど待っていた夜でしたので、城中に人を一人残し留めて、「我らが落ち延びて四五町(4〜500m)にまったと思う時に、城に火をかけよ」と言い置いて、皆物の具([武具])を脱ぎ、寄せ手に紛れて五人三人別々に分かれて、敵の役所([戦陣で、各将士が本拠とする詰所])の前の軍勢の枕の上を越えて静かに落ちて行きました。


続く
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by santalab | 2014-06-08 09:39 | 太平記 | Comments(0)

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