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「太平記」赤坂城軍の事(その12)

正成必死のやじりに死を遁れ、二十余町落ち延びて跡をかへり見ければ、約束に不違、早や城の役所どもに火を懸けたり。寄せ手の軍勢火に驚いて、「すはや城は落ちけるぞ」とて勝つ鬨を作つて、「余すな漏らすな」と騒動さうどうす。焼けしづまりて後のち城中じやうちゆうを見れば、大おほきなる穴の中なかに炭を積んで、焼け死したる死骸多し。皆これを見て、「あなあはれや、正成早や自害をしてけり。敵ながらも弓矢取つて尋常に死したる者かな」と誉めぬ人こそなかりけれ。




正成(楠木正成)は必死の鏃に死を遁れ、二十余町(約2km)落ち延びて後ろを振り返れば、約束通り、早や城の役所([戦陣で、各将士が本拠とする詰所])に火を懸けられました。寄せ手の軍勢は火に驚いて、「やった城は落ちたぞ」とて勝つ鬨を作って、「余すな漏らすな」と城中は騒ぎになりました。焼け静まった後に城中を見れば、大きな穴の中に炭を積んで、焼け死んだ死骸が多くありました。敵は皆これを見て、「ああ哀れなものよ、正成はすでに自害をしたぞ。敵ながらも弓矢取ってあっぱれな死に様よ」と誉めない者はいませんでした。


続く
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by santalab | 2014-06-08 09:44 | 太平記 | Comments(0)

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