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「太平記」主上臨幸依非実事山門変儀の事付紀信事(その4)

さしもやむごとなき一山いつさん貫首くわんじゆくらゐを捨てて、いまだ習はせ給はぬ万里漂泊ばんりへうはくの旅に浮かれさせ給へば、医王山王いわうさんわう結縁けちえんもこれや限りと名残りしく、竹園連枝ちくゑんれんし再会さいくわいも今はいつをか可期と、御心細く被思し召しければ、かたみに隔たる御影の隠るるまでにかへり見て、泣く泣く東西へ別れさせ給ふ、御心の内こそ悲しけれ。そもそも今度主上しゆしやう、まことに山門へ臨幸不成に依つて、衆徒しゆとの心たちまちに変ずること、一旦事ならずと云へども、つらつら事のやうを案ずるに、これ叡智の不浅るところに出でたり。




やんごとなき一山の貫首(天台座主)の位を捨てて、習われたこともない万里漂泊の旅に出られて、医王山王(比叡山延暦寺の本尊薬師如来と日吉大社の祭神山王権現)の結縁もこれを限りと思えば名残り惜しく、竹園連枝([天子の子孫である兄弟姉妹])の再会はあるだろうかと、心細く思われて、互いに遠ざかる姿が見えなくなるまで振り返り見ながら、泣く泣く東西へ別れて行く、心の内は悲しいものでした。そもそもこの度主上(第九十六代後醍醐天皇)が、山門(比叡山)に臨幸なさらなかったことで、衆徒([僧])が心をたちまちに変えたのは、一時の事とはいえ、よくよく事の次第を考えると、知恵が浅い現われだと思われました。


続く
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by santalab | 2014-06-08 22:21 | 太平記 | Comments(0)

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