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「太平記」義貞夢想の事付諸葛孔明事(その7)

仲達ちうたつこれを聞いて、『御方のつはもの七十万騎しちじふまんぎその心一人も不同、孔明こうめいが兵三十万騎、その心ざし皆同じと云へり。されば戦ひを致して蜀に勝つ事は努々ゆめゆめあるべからず。孔明が病めるつひえに乗つて戦はば、必ず勝つ事を得つべし。その故は孔明この炎暑えんしよに向かつて昼夜ちうや心身をらうせしむるに、温気うんき骨に入つて、病ひに臥さずと云ふ事あるべからず』と云ひて、士卒じそつあざけりをもかへりみず、いよいよ陣を遠く取りて、いたづらに数月すげつをぞ送りける。士卒どもこれを聞きて、『如何なる良医と云ふともあはひ四十里しじふりを隔てて、暗に敵の脈を取り知る事やあるべき。ただ孔明こうめい臥龍ぐわりよういきほひを聞きぢしてかかる狂言をば云ふ人なり』と、たなごころを打つて笑ひ合へり。




仲達(司馬懿)はこれを聞いて、『味方の兵は七十万騎だがその思いはばらばらだ、孔明(諸葛亮)の兵三十万騎は、心ざしを皆同じく持っているようだ。ならば戦いをしたところで蜀に勝つことは決してないであろう。孔明が病いになるのを待って戦えば、必ずや勝てるに違いない。孔明はこの炎暑にも関わらず昼夜心身を砕いておるという、この温気([暑さ])が身に堪えて、病いに倒れないことがあろうか』と言って、士卒([兵士])の嘲りも意に介さず、ますます陣を遠く取って、いたずらに数月をぞ送ったのじゃ。士卒たちはこれを聞いて、『どんな良医といえ間四十を隔てて、敵の様子など知り得るものではない。孔明の臥龍の勢いを聞き恐ろしくなってそのような狂言を言っているのであろう』と、手を打って笑い合ったそうじゃ。


続く
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by santalab | 2014-06-10 08:48 | 太平記 | Comments(0)

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