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「宇津保物語」俊蔭(その49)

いと深き山道のほど、堪へ難く聞きしかど、うつほとも思えず、前一町ばかりのほどは明らかに晴れて、同じ岡と云へど、人の家の作れる山のやうにて、木立ちをかしう、所々に、松、杉、花の木ども、菓物 くだものの木、数を尽くしてなき物なく、しひ、栗、森をやしたらむ如く、巡りて生ひ連なれり。すべて、仏の現じ給へる所なれば、かからざらむ人も住ままほしげに見えたり。うつほの前に、一間ばかり去りて、払ひ出でたる泉のつらに、をかしきほどのいはほ立てり。小松所々あるに、椎、栗、その水に落ち入りて、流れ来つつ、思ひしよりも、使ひ人一人得たらむやうに、便りありて思ゆ。




とても深くまで続く山道で、堪え難いほどと母は聞いていましたが、うつほに着くまで一度もつらいとは思いませんでした。うつほの手前一町(約100m)ほどは明るく開けていて、他と同じように丘になっていて、ちょうど人家に作った山のようでした、木立ちは趣きがあって、所々に、松や、杉、花の咲く木や、実がなっている木は、数えきれないほどで、椎や、栗が、森全体に生えていました、うつほのまわりを囲むように重なって生えていました。何もかもそろっていて、まるで仏が現われる場所のよう、この場所を知らない人でもきっと住みたくなるような場所に見えました。うつほの前から、一間(約1.8m)ほど離れた場所に、勢いよく湧き出る泉がありあたりには、少し変わった岩が置かれていました。小松が所々に生えていて、椎の実、栗の実が、その水に落ちて、勝手にこちらに流れていました。使用人が一人いるようで、とても便利だと思えました。


続く


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by santalab | 2014-06-11 22:03 | 宇津保物語 | Comments(0)

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