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「太平記」相摸入道弄田楽並闘犬の事(その3)

相摸入道にふだう懸かる妖怪えうくわいにも不驚、ますます奇物を愛する事止む時なし。ある時庭前に犬ども集まりて、噛み合ひけるを見て、この禅門面白き事に思ひて、これを愛する事骨髄こつずゐに入れり。すなはち諸国へ相触あひふれ/rt>れて、あるひは正税しやうぜい官物くわんもつに募りて犬をたづね、あるひは権門高家けんもんかうけおほせてこれを求めける間、国々の守護国司、所々の一族大名だいみやう十疋じつびき二十疋飼ひ立てて、鎌倉へ引きまゐらす。これを飼ふに魚鳥ぎよてうを以つてし、これを繋ぐに金銀をちりばむ。そのつひえはなはだ多し。輿に乗せて路次ろしを過ぐる日は、道を急ぐ行人かうじんむまより下りてこれにひざまづき、農を勤むる里民りみんも、に被取てこれを舁き、かくの如く賞翫しやうぐわん不軽ければ、肉に飽き錦を着たる奇犬きけん鎌倉中かまくらぢゆうに充満して四五千疋に及べり。




相摸入道(北条高時たかとき。鎌倉幕府第十四代執権)はこのような妖怪にも驚かず、ますます奇物に興味を持つようになりました。ある時庭前に犬どもが集まって、噛み合うのを見て、この禅門は面白いろ、闘犬を好むようになりました。すぐに諸国へ触れ回って、ある国には正税([租税])・官物([貢納物])として犬を集め、ある国には権門高家([社会的な特権を有した権勢の ある門閥・家柄・集団])に命じて犬を求めたので、国々の守護国司、所々の一族大名は、十匹二十匹と飼い育てて、鎌倉へ参らせました。相摸入道は犬を飼うのに魚鳥を与え、犬を繋ぐ鎖には金銀をちりばめました。その費用は莫大なものでした。犬を輿に乗せて路次を通れば、道を急ぐ行人も馬から下りて犬にひざまづき、農業を営む里民も、人夫に取られて輿を舁き、このように犬をたいそう珍重したので、肉に飽き錦を着た奇犬が、鎌倉中に充満して四五千匹に及びました。


続く
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by santalab | 2014-06-15 15:32 | 太平記 | Comments(0)

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