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「曽我物語」母、二宮行き別れし事(その5)

しかれば、漢の高祖かうそ三尺さんじやくつるぎも、つひに他の宝と成り、しん始皇しくわう玻璃はりの都も、自づから荊棘けいきよくの野辺と成る。かれを思ひ、これを見るにも、ただひとへに浮き世を逃れ、まことの道に入るべきものをや。かかりしほどに、二人の尼、行業ぎやうごふ積もり、七旬しつしゆんよはひ長け、五月のすゑつ方、少病せうびやう少悩せうなうにして、西に向かひ、肩を並べ、膝を組み、端座合掌たんざがつしやうして、念仏百返唱へて、一心不乱にして、音楽雲に聞こえ、異香いきやうくんじて、聖衆しやうじゆ来迎らいかうし給ひて、眠るが如く、往生わうじやう素懐そくわいを遂げにけり。




であれば、漢の高祖(劉邦。前漢の初代皇帝)の三尺の剣も、遂には他の者の宝となり、秦始皇帝(秦の初代皇帝)の玻璃([ガラス])の都も、自然と荊棘([イバラ])の野辺となるのです。あれを思い、これを見るにつけ、ただひたすらに浮き世を遁れ、まことの道([仏道])に入るべきなのです。やがて、二人の尼(虎御前と手越少将)は、行業を積もらせ、七旬(七十)の齢に及び、五月の末頃、少病少悩にして、西に向かい、肩を並べ、膝を組み、端座([正座])合掌して、念仏を百返唱えて、一心不乱に祈ると、音楽が雲に聞こえ、異香([すばらしい香り])が香り、聖衆([極楽浄土の諸菩薩])が来迎して、眠るように、往生の素懐を遂げました。


続く
by santalab | 2014-06-18 08:38 | 曽我物語

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