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Santa Lab's Blog


「曽我物語」人々、君へ参りて、請ひ申さるる事(その1)

ここに梶原平三へいざう景時かげとき、近く寄りて、祐信すけのぶまうしけるは、「御歎きを見奉るに、推し量られて思ゆるなり。暫く待ち給へ。一端ひとはし申して見ん」と言ひければ、弥太郎いやたらうおほきに喜びて、暫く時を移しける。まことに景時、差し切りて申されんには、適ひつべしと、人々頼もしくぞ思ひける。景時、御前おんまへに畏まりければ、君御覧ぜられて、「梶原こそ、例ならず訴訟顔そしようがほなれ」「さんざうらふ。曽我の太郎が養子やうしの子ども、ただ今、浜にて誅せられさうらふ。あはれ、それがしに、御あづけもや候へかし。景時が申状まうしじやう、聞こし召し入れらるべきと、あまねく思ひ候ふものをや」と、まうしければ、君聞こし召して、「今朝より、源太げんだ申しつれども、あづけず。なんぢ、恨むべからず」とおほせ下されければ、力及ばず、御前を罷り立ちけり。




ここに梶原平三景時(梶原景時)が、近付いて、祐信(曽我祐信)に申すには、「お歎きを見て、まるで私事のように思われます。しばらくお待ちなさい。わたしからも申してみましょう」と言ったので、弥太郎(堀弥太郎)も、たいそうよろこんで、しばらく待つことにしました。景時が、頼朝に詰め寄って申せばば、赦されるのではないかと、者たちは頼もしく思いました。景時が、御前に畏まると、君(源頼朝)は景時を見て、「梶原(景時)よ、いつもと違うな訴え申すことがあるか」「そうでございます。ただ今、曽我太郎(曽我祐信すけのぶ)の養子の子ども(一萬・筥王)が、ただ今、由比ヶ浜で誅せられようとしております。哀れで、わたしに、預けてくださいませんか。この景時が申せば、聞き入れていただけると、皆人が申しますので」と、申せば、君(頼朝)はこれを聞いて、「今朝も、源太(梶原景季かげすゑ。景時の嫡男)が申したが、預けなかったのだ。お主よ、わたしを恨むでないぞ」と申したので、仕方なく、景時は御前を立ちました。


続く


by santalab | 2014-07-04 20:09 | 曽我物語

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