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Santa Lab's Blog


「酔い源氏」手習(その17)

人が話すのを聞くに、あれからずいぶん日数も経ってしまったようでした。どれほどみっともない姿を見知らぬ人に見られたのか、と思えば恥ずかしく、結局死ねなかったのだわ」と思えば悔やまれて、さらに悲しくなりました。物の怪が憑いていた日々は、正気はないものの多少の食事は取っていましたが、今ではまったく湯さえも飲もうとしませんでした。尼君は「どうして、自ら命を疎かにするようなことをなさいます。長く患っておられましたが熱も下がって、苦しそうにも見えず、うれしく思っておりますのに」と、涙を流しながら、片時も女のそばから離れず世話をしました。ほかの女房たちも、美しい姿顔立ちを見て、心を尽くし惜しみなく世話をしました。


女は心の内では、「なんとしても死にたい」と思い続けていましたが、あれほどの事がありながら、死ねずにいることをただ執念深いせいと思うばかりでした。ようやく頭を起こせるようになって、食事も取るようになってからは、かえって顔がほっそりとしてきました。尼君はいつか元通りにと思っていたのでうれしそうにしていましたが、女が「尼にしてください。尼以外に生きていくことはできません」と申したので、尼君は「こんなに美しいのにもったいないことですよ。どうして、尼にできましょう」と答えて、ただ頭の毛を少しだけ切って、五戒ばかりを授けました。女は心安くは思えませんでしたが、本よりおっとりとした性格で、強く言えない性格でしたのでこれ以上は言えませんでした。横川の僧都も、「もう、心配はないじゃろう、祈念することもなかろう」と言い残して、山に帰って行きました。


続く


by santalab | 2014-07-07 22:34 | 源氏物語

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