中将には水飯を出し、尼君にも蓮の実などが出されましたが、中将は遠慮することなく平げると、村雨に足を止められて、尼君としずかに話をしていました。「亡くなってしまった娘のことよりも、心優しいあなたが他人になってしまったことが悲しい。どうして、忘れ形見を残してくれなかったのですか」と、恋しく思っていたせいでしょうか、折に付けそのような話をして、不思議に思っている話さえ話してしまいそうでした。姫君【浮舟】もまた、この頃は昔を思い出すことが多くなりました。ぼんやりと外を眺める姿はとても美しいものでした。白い単衣、一つ曇りなく鮮やかな白色のものに袴も桧皮色に合わせて、輝きのない暗い色のものを着ていました。「このような姿をすることは今までなかったことだわ」と思いました。ごわごわした着物でしたが、それさえも趣きがありました。
(続く)