その年十月、大なりつるを、保元の例とかやとて、十一月一日に宣下せられたり。新しき御代に当たりて、月日さへ改まりにけり。十一月十六日御即位あり。摂政は後称念院殿冬平、今日は御慶び申しありて、やがて行幸に参り給ふ。あるべき限りの事ども、古きに変はらで、めでたく過ぎ行きぬ。
その年(徳治三年(1308))の十月は、大の月([三十日の月])でございましたので、保元(第七十七代後白河天皇)の例とか申されて、十一月一日に天皇宣下がございました。新しい時代となり、月日さえ改まりました(延慶)。十一月十六日に花園天皇(第九十五代天皇)が即位なさいました。摂政は後称念院殿冬平(鷹司冬平)、その日に慶び申し([任官や位階昇進のお礼を申し上げること])がございまして、すぐ行幸に参られました。あるべき限り、昔と変わらず、おめでたく過ぎ去ったのでございます。
(続く)