法会の有様も、本社に変はらず。舞楽・田楽・獅子頭・流鏑馬など、様々所に仕付けたる事ども面白し。十六日にも、なほかやうの事なり。桟敷ども厳めしく造り並べて、色々の幔幕など引き続けて、将軍の御桟敷の前には、相模の守を始め、そこらの武士ども並み居たる気色、様変はりて、好ましう受け張りたる、心地よげに、所につけてはまたなく見えたり。
法会も、本社(現京都府八幡市にある石清水八幡宮)と同じでございました。舞楽・田楽・獅子頭([獅子舞])・流鏑馬([騎射の一])など、様々所々で行われて面白うございました。十六日にも、同じく法会が執り行われました。桟敷([祭りの行列や花火の見物などのために、道路や川などに面してつくる仮設の席])を物々しく造り並べて、色々の幔幕([周囲に張り巡らす、横に長い幕])を引き続けて、将軍(惟康親王。鎌倉幕府第七代将軍)の桟敷の前には、相模守(北条貞時。鎌倉幕府第九代執権)をはじめ、諸国の武士どもが並み居る有様は、いつになく、我が物顔で、心地よさそうにしておられました、まったくその場に溶け込んでおられました。
(続く)