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Santa Lab's Blog


「とりかへばや物語」巻一(その12)

かかる御ざえかたち優れ給へる事やうやう世に聞こえて、内・春宮にも、さばかり何事にも優れたなるを、今まで殿上などもせさせず、交ろはせぬ事と、尽きせずゆかしがらせ給ひて、大将殿にも度々御気色あれど、いとど胸つぶれ、浅ましくかたはら痛ければ、いまだいはけなき様を奏して、取り出で給はぬを、童姿目馴らさじとするならんとて、かうぶりをさへをして賜はらせて、く疾く大人びさせて参らすべき様にのみ度々御気色あるにさへ、いかに聞こえて参らせぬやうあるべきならねば、さりとては、たださらばあるに任せてあるばかり、これも前の世のことならめば、かかる筋にても、各々さても物し給ふべき契りこそはと、ひたぶるに思しなりて、今年は御裳着・御元服、我も我もと急ぎ給ふ。




若君【姫君】の才・姿かたちが人に優れていることが世に広まり、内裏【朱雀院】・春宮【帝】は、それほどに何事にも優れた者を、どうして今まで殿上人にもさせず、人と交じらわせないのかと、つくづく残念がられて、大将殿【権大納言】にも度々出仕させるように申されました、これを聞くたびに大将殿【権大納言】はいっそう胸つぶれ、情けなくも気の毒に思われましたが、まだ幼いと言い訳して、出仕させませんでした、帝は童姿を見せたくはないのだろうと思われて、冠([五位に叙せられること])を賜り、すぐさま元服させて出仕させるよう度々申されたので、これ以上辞することもできなくて、こうなった以上、なるがままに任せようと思われました、これも前世の宿業であるとあきらめて、男女を入れ替えて、それぞれ生きる定めであるのだろうと、思うことにして、この年裳着・元服の準備を、急がせたのでございます。


続く


by santalab | 2014-09-09 22:06 | とりかへばや物語

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