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「とりかへばや物語」巻一(その13)

その日になりて、この殿の御しつらひ、世の常ならず磨き立てて、姫君渡し奉り給ふ。東の上も渡り給へり。大殿ぞ御腰は結ひ給ふ。うとうとしからぬはねぢきたれど、さすがにかたはら痛く思すなるべし。かかる御事どもを聞くよそ人は、思ひ寄るべき事ならねば、ただ若君姫君を思ひたがへ、聞きひがめたりけるとのみぞ心得ける。まれまれくはしく知りたる人は、またいかでかうち出づべきことの様ならねば、並べて世に知る人なきぞいとよかりける。




姫君【若君】の裳着の日になりました、殿の設えを、世のものとも思えぬほどに飾り立てて、姫君【若君】を母屋もやに渡しました。大殿(姫君【若君】の祖父)が腰結([裳の腰紐を結ぶ腰結の役])をされました。身内が腰結をするのは通常ではありませんでしたが、さすがに他人には任せるのを憚ったのでございましょう。裳着のことを聞く他人は、まさか若君とは思いもしませんでしたので、姫君を若君と聞き間違いをしていたのだろうと思うのでした。わずかに本当のことを知る人も、おめでたい席で申すことでもなく、世に知られることがないことがせめての救いでございました。


続く


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by santalab | 2014-09-11 08:42 | とりかへばや物語 | Comments(0)

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