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「増鏡」おどろのした(その13)

草の緑の濃き薄き色にて、去年こぞの古雪の遅くく消えけるほどを、推し量りたる心ばへなど、まだしからん人は、いと思ひ寄り難くや。この人、年積もるまであらましかば、げにいかばかり、目に見えぬ鬼神をも動かしなましに、若くて失せにし、いといとほしくあたらしくなん。かくて、この度撰ばれたるをば、新古今と言ふなり。元久げんきう二年三月二十六日、竟宴きやうえんと言ふ事、春日殿にてをこなはせ給ふ。いみじき世の響きなり。かの延喜えんぎの昔思しよそへられて、院の御製、

いそのかみ 古きを今に ならべこし 昔の跡を 又尋ねつつ

摂政殿良経よしつね大臣おとど
敷島や 大和言の葉 海にして 拾ひし玉は みがかれにけり




草の緑の濃い薄い色で、去年の古雪が遅くまたは早く消えたのでしょうと、思い巡らせるその心ばえは、数寄でない人には、思い寄らぬことでしょう。後鳥羽院宮内卿が、年の積もるまで生きておられたならば、どれほど力を発揮されたことでございましょう、目に見えぬ鬼神さえも動かたに違いございませんが、若くて亡くなってしまいました、とても残念なことでございました。こうして、この度勅撰されたものを、新古今(『新古今和歌集』)と申します。元久二年(1205)三月二十六日、竟宴([平安時代、宮中で進講や勅撰集の撰進が終わったあとで催される酒宴])と申すものが、春日殿(大炊御門殿。後鳥羽院の院御所)で行われました。たいそう盛大なものでございました。かの延喜の昔(『古今和歌集』)を思い重ねられて、後鳥羽院の御製([天皇の作る詩文や和歌])、

石上いそのかみ(現奈良県天理市にある石上神社)の古き時代からの和歌を並べた和歌集ぞ。昔の跡を尋ねながら選んだすばらしい和歌集である。

摂政殿良経大臣(九条良経)、
敷島(和歌)は数多くございますが、大和言葉の海から秀歌を選び出されたすばらしい和歌集でございます。


続く


by santalab | 2014-09-14 10:46 | 増鏡

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