中務の御子、
代々をへて 絶えじとぞ思ふ この宿の 花に御幸の 跡を重ねて
誰も誰も、この
筋にのみ惑はされて、花の
御幸の外は、
珍しき節もなければ、さのみも記し難し。
万飽かず名残り
多かれど、さのみはにて、九日に
帰らせ給ひぬ。
中務の皇子(尊良親王)、
代々を経ても、絶えないようにしようと思います。この宿の花が永く咲き続けるように、御幸を重ねましょう。
誰かれも、和歌に熱中されて、花の御幸のほかは、珍しいこともございませんでしたので、話すことはございません。飽きることなく名残り多くございましたが、尽きるものではございませんので、九日に帰られました。
(続く)