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「宇津保物語」藤原の君(その2)

三日の夜、御土器かはらけ取りて、「ここに、かくものするとて、かの太政大臣の娘を忘れず、等しく通ひ給はむなむ、よかるべき」なんどのたまひて、

岩の上に 並べて生ふる 松よりも 雲居に及ぶ 枝もありなむ

源氏正頼まさより、御土器賜はるとて、
松の根を 植うる今日より 岩の上を 広き林と 人に知らせむ

右大臣橘千蔭ちかげ
岩の上の 苔の筵に 住む鶴は 世をさへ長く 思ふべきかな

左大臣忠経ただつね
卵の内に 昨日は見えし 鶴の子の 今日は上にも 並び居るかな

中納言行忠ゆきただ
葦鶴の 移る千歳の 宿りには 今や砂子の 岩となるらむ

など、これかれのたまひて。




三日の夜(当時の結婚は、男が女の家に通う『通い婚』で、三晩男が通ってくれば、結婚の意思ありとみなされたらしい。結婚を承諾するのは女性の両親で、結婚を認めた場合は、三日目に露顕ところあらはし、今でいう披露宴が行われ、男が女の両親と対面したということです。このようにして結婚が成立し、新郎新婦は三日夜みかよもちいを食べたということです。余談ですが、離婚については、男が主導権を持っており、女の許に通わなくなれば、結婚が自然消滅したらしい)に、酒宴の運びとなり、女一の宮の父母は、「ここに、露顕を催すが、太政大臣の娘を忘れず、我が娘と同じように通うが、よかろう」などとおっしゃって、

岩の上に、並んで生える松のような二人ですが、雲にとどくほど伸びた枝もあるようです。

源氏正頼が、酒をいただいて、
松の根を植えた今日ですが、岩の上もきっと広い林となることでしょうと、人に伝えましょう。

右大臣橘千蔭、
岩の上の苔のむしろに住む鶴も、お二人の世が末長く続くと思っていることでしょう。

左大臣忠経、
昨日は、まだかひだと思っていた鶴の子ですが、今日はりっぱに二人並んで空を飛んでいます。

中納言行忠、
あしたづ(鶴)が千年の間、住む家には、砂子も岩となりましょう。

などと、誰も彼も歌を詠みました。


(松、鶴は長寿のシンボル、岩も長年その姿を変えないということで、この結婚、つまり二人の仲が末長く続くことを願った歌なのでしょう。)


続く


by santalab | 2014-09-20 09:08 | 宇津保物語

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