その年の五節に、中院の行幸ありければ、皆人々小忌にて参る中に、宰相中将・権中納言の青摺、いとどいみじう見ゆ。宰相は、いとそそろかに雄雄しく鮮やかなる様して、なまめかしう由あり、色めきたる気色いとおかしう見ゆ。
その年の五節([大嘗祭・新嘗祭に行われた五節の舞を中心とする宮中行事])に、中院(朱雀院。[中院]=[上皇が同時に三人以上いる時、本院の次の上皇をさす称])の行幸がございました、皆人は小忌衣([ 大嘗祭・新嘗祭などの大祭に、官人が行った厳しい斎戒に着用する衣])で参る中に、宰相中将・権中納言【姫君】の青摺りの衣([物忌みのしるしとして、白地に山藍の葉などで模様を青く型摺りにした衣])が、とてもりっぱに見えました。宰相中将は、たいそうそそろか([背が高いさま])でどっしりとされていながらも、どこか婀めいて、色めき立っておりました。
(続く)