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Santa Lab's Blog


「松浦宮物語」一(その28)

いはけなくおはする太子を常に御前にてうつくしみ給ふ時、必ずさぶらはせて、殊に馴れつかうまつるべき御気色あるにつけて、人はいみじう心得ぬ事に思へれど、かくいささかかたぶき怪しまれ給ふ事も出で来ける。様殊なる舞姫ども数知らず、花の如飾りて、えもいはぬ調べを調へ、この国のかほよき人を集めて、心留まるべきことをせさせ給へど、元の国にてだにいみじうしづまれし心なれば、さらに乱れず、限りなく納めたるを、「かの国の人は思ひしよりも忠実まめなりけり」と、ありがたく御覧ず。労はらせ給へど、国の習ひいとも木折きをりに事々しくて、いささかのたがひ目あらば、必ず重き過ちとなりぬべきを見るに、心を添へて慎みたれば、ただ独り寝をのみして、秋にもなりぬ。




まだ幼い太子を御前でかわいがっておられる時は、決まって弁少将を伺候させて、親しくされようとなさっておられるのを、人はどういうことかといぶかっていましたが、そのうちわずかに天下が危うくなるようなことが起こりました。とびきり美しい舞姫どもが数知れず、まるで花のように着飾り、美しい調べを奏で、唐国の美人を集めて、心に残るような遊びを催すようになりました、元の国(日本)でも羽目を外すようなことはありませんでしたので、まったく乱れることなく、身を律していましたので、唐皇帝は「かの国の人は思う以上に真面目だな」と、感心されました、唐皇帝は慰労されましたが、唐国では木折り([頑固で愛想のないこと])に思えるほどに、わずかの思い違いで、必ず重い罪に問われるのを知っていたので、用心して慎み、ただ独り寝しているほどに、秋になりました。


続く


by santalab | 2014-10-03 20:43 | 松浦宮物語

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