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Santa Lab's Blog


「松浦宮物語」一(その31)

きざはしうへ兀子ごして、とばかり聞くに、心は澄みまさりて、涙はほろほろとこぼれぬ。人のかくて居たるを見入る様にもあらず、こゑはいとおもしろくて、琴の声に合はせて唱歌さうがしたる、似るものなくめでたし。うち見せて怪しとも思えらず、またいふこともなく心を澄むませる様なれば、ただ聞きたるに、暁になりけり。




老人は階段の上の兀子([長方形の板の四辺に脚をつけた腰掛け。朝儀に列席する官人などが用いた])に座っていました、弁少将がしばらく聞いていると、心が研ぎ澄まされたように、涙がぽろぽろこぼれてきました。老人は弁少将が居るのも気にかけず、たいそう趣きのある声で、琴の音に合わせて唱歌([楽に合わせてうたうこと])していましたが、何ともいえずすばらしいものでした。弁少将は老人をずっと見ていましたが不思議とも思えず、またえもいわず心は澄んで、ただ琴の音を聞いているうちに、明け方になりました。


続く


by santalab | 2014-10-05 21:29 | 松浦宮物語

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