中納言のいとめでたく優れながら、よそよそにて、人目ばかり情けある様に、のどやかに様よき目移しには、かういといみじく死ぬばかり思ひ焦らるる人を、心ざしあるにこそと思ひながら、気色にても人の漏り聞きたらん時と、恐ろしうそら恥づかしきに、人知れぬあはれの見知られずしもあらずなりにけるも、我ながらいと心憂と思ひ知らる。
中納言【姫君】は美しく優れてはいても、どこか四の君によそよそしく、人目には四の君を大切にしているように見えて、穏やかな人柄でしたが一方宰相中将は、死ぬほどに思い焦がれる情熱の人で、宰相中将こそわたし(四の君)のことを本当に愛しているのだと思うのでした、けれど噂でさえも女房どもに漏れ聞こえたらと、恐ろしくも恥ずかしくも思われるのでした、人の知らない愛情を理解するにつけ、四の君はますますつらさを思い知るのでした。
(続く)