人気ブログランキング | 話題のタグを見る

Santa Lab's Blog


「住吉物語」上(その27)

姫君は、とみにも下り給はぬを、「いかに」と責めければ、侍従差し寄りて、「いかに、人をば下ろし参らせて」と申しければ、下り給へり。桜襲さくらがさね御衣おんぞに紅の単袴ひとへばかま踏みしだき、さし歩み給へる御姿、いと気高く、髪はうちきの裾に豊かに余りて、美しさ、に描くとも、筆も及び難くぞ見え給ひける。少将、これを見参らせて、「世には、かくめでたき人も侍るにや」と思して、大きなる松の下に隠れ居給へるを、この姫君しも見つけ給ひて、顔うち赤めて、急ぎ車に乗り給へるにつけても、心ある様なり。各々騒ぎ隠れ合へる様も、あらまほしきほどなり。




姫君は、なかなか車から下りませんでしたので、女房たちは「さあ早く」と催促しました、侍従が姫君に近付いて、「車から下りてくださいませ、女房たちが申しております」と申したので、姫君は車から下りました。桜色の衣に紅色の単袴([裏をつけない袴])を着て、歩く姿は、とても上品で、髪は袿の裾よりもはるかに長く伸びて、その美しさは、絵に描くとも、筆も及ばないことに思えました。少将は、姫君を見て、「世に、これほど美しい人がいるとは」と思いながら、大きな松の木の下に隠れているのを、姫君が見付けて、顔を赤らめて、急いで車に乗り込みました、とても恥ずかしげに思えました。女房どもも声を上げて隠れましたが、もっともなことでした。


続く


by santalab | 2014-10-23 09:16 | 住吉物語

<< 「とりかへばや物語」巻一(その90)      「増鏡」久米の佐良山(その12) >>

Santa Lab's Blog
by santalab
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
カテゴリ
以前の記事
フォロー中のブログ
メモ帳
最新のトラックバック
ライフログ
検索
タグ
その他のジャンル
ブログパーツ
最新の記事
外部リンク
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧